2050年カーボンニュートラルに向けて住宅の省エネ化が進む中で、国が強く推し進めているのがZEH住宅の普及です。2030年度以降に新築される住宅には、ZEHレベルの省エネ性能の確保を目指すという政府目標が設定され、近い将来、住宅を購入するならZEHが当たり前という時代がやってきます。これからの住宅のトレンド、ZEHについて改めてご紹介します。
<<目次>>
●消費するエネルギー≦創り出すエネルギー
●三本柱「断熱」「省エネ」「創エネ」
●経済性
●快適・健康性
●レジリエンス(強靭性・回復力)
●建築コストが上がる
●太陽光のメンテナンス、メンテナンスコストがかかる
●間取りに制約がでる可能性がある
●ZEH
●Nearly ZEH
●ZEH Oriented
●ZEH +
●Nearly ZEH +
●次世代ZEH+
●強化外皮基準
●基準一次エネルギー消費量を20%以上削減
●再生可能エネルギーを導入(容量不問)
●基準一次エネルギー消費量から100%削減(再生可能エネルギー含む)
●2022年10月から認定住宅の省エネ性能がZEHレベルに
●省エネ基準は先進国最低レベル
●ZEH支援事業
●次世代ZEH+(注文住宅)実証事業
●次世代HEMS実証事業
●ZEHビルダー・ZEHプランナー登録の建築会社を利用する
●ZEH補助金申請後は設計の変更ができない
●最新スケジュールを確認する
ZEHとは
ZEH:Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、年間の一次エネルギー消費量の収支を正味(ネット)でゼロ以下にする住宅のことを言います。「断熱」「省エネ」「創エネ」の三本柱で、年間を通じて「消費するエネルギー≦創り出すエネルギー」を実現します。
出典:ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について – 省エネ住宅
室内の暖まった(冷えた)空気を外に逃さないようにすることで、冷暖房にかかるエネルギーを低く抑えることができる「断熱」、エアコンや給湯器などの設備や照明を省エネ型の機器にすることで消費するエネルギーを抑える「省エネ」、太陽光発電や地熱発電などを用いて自らエネルギーを創り出す「創エネ」を組み合わせます。
家庭内のエネルギーの使用状況を確認、一元管理できるホームエネルギーマネジメントシステム(HEMSヘムス)や、夜間でも再生エネルギーを活用できる蓄電システム、電気自動車への充電設備など、更にエネルギー効率を高める機器の導入も進んでいます。
ZEH住宅のメリット
(1)経済性
高い断熱性能や高効率設備の利用により、月々のエネルギー消費量が少なくなる分、光熱費を安く抑えることができます。今後予測される電気代等の値上がりによる光熱費の上昇も少なくすみます。さらに、売電を行った場合には収入も得ることができます。
(2)快適・健康性
高断熱の家は、室温を一定に保ちやすいので、夏は涼しく、冬は暖かい、快適な生活が送れます。効率的に家全体を暖められるので、部屋間の温度差が小さく、冬場のヒートショックによる心筋梗塞等の事故を防ぐ効果もあります。お風呂やトイレが寒くて億劫だといった日々の小さなストレスが解消される他、高血圧症の防止、循環器疾患の予防、熱中症の予防、身体活動の活性化等住まい手の健康づくりに繋がります。
(3)レジリエンス(強靭性・回復力)
台風や地震等、災害の発生に伴う停電時においても、晴れた日中は太陽光発電設備で電力確保が可能です。蓄電池を導入することでより安全で安心な生活を送ることが可能です。災害からの回復、非常時でも普段の生活に近い暮らしが続けられます。
ZEH住宅のデメリット
ZEH住宅では断熱効果の高い素材を使用したり、太陽光発電を設置したりするため、建築コストが従来より150~200万程度高くなると言われています(設備投資のグレードや家の大きさによって変わります)。省エネ性能が優れた冷暖房設備や給湯器、LED照明などを導入する必要があるため、これらの費用も合わせると一般の住宅よりどうしても高くなってしまいます。
ただ、建築費用がかかってもその分光熱費等ランニングコストで節約できるので、長い目で見れば初期費用のコストを回収できます。一般の住宅に比べ資産価値が残りやすいとも言われているため大きなデメリットとは言い切れません。
その他のデメリットとして、太陽光のメンテナンスやメンテナンスコストが必要な点、断熱性・気密性の基準を満たすために間取りに制約がでる可能性がある点は頭に入れておきましょう。
ZEHの種類
年間の一次エネルギー消費量の収支が正味(ネット)でゼロ以下になる「ZEH」、年間の一次エネルギー消費量が75%以上削減できる「Nearly ZEH」、都市部において太陽光発電や蓄電池がなくとも断熱性・省エネ性がZEH基準を満たしていれば認定される「ZEH Oriented」、ZEH、Nearly ZEHより高性能な「ZEH+」「Nearly ZEH+」、ZEH+の要件を満たした上で充放電設備や燃料電池などを導入してさらなる自家消費拡大を目指す「次世代ZEH+」の5つがあります。
少し補足すると、「Nearly ZEH」は寒冷地(地域区分1または2地域)、低日射地域(日射区分がA1またはA2の地域)、多雪地域(垂直積雪量100cm以上)といった太陽光発電などによって創エネが十分に行えない地域のみが対象となっています。「ZEH Oriented」は北側斜線制限の対象となる用途地域(第一種および第二種低層住居専用地域並びに、第一種および第二種中高層住居専用地域)等であって、敷地面積が85㎡未満である「都市部狭小地」に建築された住宅のみが対象です。
「ZEH+」「Nearly ZEH+」は一般的なZEH、Nearly ZEHの条件をクリアした上で、一次エネルギー消費量を25%以上削減する必要があります。ZEH、Nearly ZEHでは20%以上の削減が求められているので更に5%高い条件設定となります。加えて「外皮性能の更なる強化」「高度エネルギーマネジメント(エネルギーを管理・コントロールするシステムHEMSの導入)」「電気自動車を活用した自家消費の拡大措置」の3つの要素のうち2つ以上を採用しなければなりません。
「次世代ZEH+」はZEH+の要件に「蓄電システム」「V2H充電設備(充放電設備)」「燃料電池」「太陽熱利用温水システム」「太陽光発電システム(10kW以上)」の5つの中から1つ以上を選択し導入する必要があります。
ZEH住宅に必要な4つの基準
ZEH住宅として認められるためには満たすべき基準が4つあります。
ZEH強化外皮基準を満たした上で、UA値[W/㎡K]=0.6、断熱等性能等級の等級5をクリアしていること(6地域の場合)。
再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から 20%以上の一次エネルギー消費量削減すること。特に空調、照明、給湯、換気の4項目でZEH基準を満たした機器を使用しなければいけません。
再生可能エネルギーを導入すること。
再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減すること。自宅で使うエネルギーは省エネ性能が高い設備や機器を使いつつ、再生可能エネルギーで100%補う必要があります。ZEH基準を満たした機器などで20%のエネルギー消費量を削減した場合、80%は再生可能エネルギーで自家発電を行い、エネルギー収支をゼロまたはマイナスにするということです。
以上の4つがZEHとして認められるための基準となります。
ZEH水準が当たり前?
住宅の省エネ化は必須対策!2025年適合義務化と新基準について解説します!のブログでも解説した通り、既に2022年10月から長期優良住宅、低炭素住宅等についてもZEH住宅と同じ「一次省エネ等級6」「断熱等級5」が義務付けられています。2025年の省エネ基準義務化では「断熱等級4」をクリアすれば良いとされていますが、この基準は20年以上変わっていない先進国最低レベルのもの。今後基準が見直されていくと考えられます。快適な生活を送るためにもZEH住宅、ZEH基準の住宅を検討されてください。
ZEHに関する補助金制度 ※令和4年度の場合
ZEH住宅は太陽光発電設備を設置したり、高い省エネ性能を確保するためにどうしても建築コストがかかります。費用面でZEH住宅を断念しなくてもいいように、補助金・優遇制度が設けられています。
①ZEH支援事業(ZEH)補助額55万円+蓄電で最大20万円
②ZEH支援事業(ZEH+)補助額100万円+直交集成板等で最大90万円
③次世代ZEH+(注文住宅)実証事業 補助額100万円+V2H充電設備等で最大75万円
④次世代HEMS実証事業 補助額112万円+V2H充電設備等で最大75万円
その他、住宅金融支援機構の「フラット35」では2022年10月より新たに「フラット35S(ZEH)」という制度がスタートしました。通常のフラット35の借入金利から当初5年間年0.5%、6年目から10年目までは0.25%の金利引き下げが受けられます。
令和4年住宅ローン改正!制度の概要から改正内容の注意点まで徹底おさらいのブログでも紹介した通り、住宅ローン残高の上限額は省エネ基準適合住宅よりZEH水準の省エネ住宅の方が500万引き上げられます。
補助金制度を利用する場合の注意点
ZEH住宅の補助金の対象になるのは「ZEHビルダー」または「ZEHプランナー」に登録された会社が建てたZEH住宅のみ。事前に登録されているか確認する必要があります。また、ZEHはエネルギー消費量や断熱効果を細かく計算してプランを設計します。補助金制度では申請した内容どおりの建築が求められるため、申請後の間取りや住宅設備の変更ができません。入念な検討を重ね、プランを最終決定させてから申請を行いましょう。申請の時期や採択方法、補助金額は種類によって異なります。公募方法は先着順で、申請金額が予算に達すると公募は打ち切られます。常に最新情報を把握しておくことが大切です。
ザハウスは「ZEHビルダー」です
ザハウスは「ZEHビルダー」に登録しています。ビルダー登録に伴い、普及目標を定め、高度省エネルギーの家づくりを進めています。2025年度の普及目標は50%!ザハウスの家づくりについてご興味のある方はお気軽に資料請求くださいませ。